Ci-en

 

booth

その少女、神聖につき 1

両性具有モノ(ふたなりモノ)のお話なので、
そういうのに不快感をもつ方は戻ってください。





以下本文



いつからこんなことになったか、だって?
そんなことは知らない。忘れた。
とにかく気がついたらこういうことになっていたのだ。

今私は志摩子さんのピナスに涎を注いでいる。
満腔の期待と幾許かの不安に可愛く震えるしかし醜悪なそれを十分に濡らしていく。
なぜってこれからフェレイシオするんだから。
今宵の就寝時には白薔薇姫の麗しい鳴き声を子守唄のように頭に響かせんがためリリアン女学園高等部棟2F東寄りのトイレにて。

口に含む。
「んん……ぁふっ」
くぐもった声は志摩子さんのもの。
私の口からも声は漏れているけど……まあそれは恥ずかしいから割愛させていただく。
「……りこ、だ…めっ……」
否定の癖に肯定しているその言葉の逆説性は私の頭を押さえつける細い指の小さな手が存分に証明してくれている。
私は自信をもって行為を続ける。

雁首に唇の淵をあわせてくっくっとそこだけを前後する。
勿論舌はその上の部分全体に何度もはわせてときおり割れ目に入っていこうと脅かしたりしながら。
志摩子さんはこうやって浅いところで往復してもらうのが大好きなのだ。
「ああ、はあ、ぅ……あ……」
雑誌で読んだ知識をそのままあてはめるだけでこうも感じてくれるなんてなんていうかこちらこそ感謝感激槍あられだった。

白く泡立った唾液がトイレの便器に落ちる。
ずるっとすすりあげる私の口音が思いのほか大きく響いて、志摩子さんの瞳を震わせる。
ずっずばちゅぱちゅぱ、ずっずばちゅぱちゅぱ……
面白くなってわざと音を響かせると見上げた見下ろしてくる瞳に明らかな動揺の色が浮かんだ。
「だめ……、お、おと……」
元々潤んでいた瞳を零れ落ちそうなほどさらに潤ませて口の端をわななかせながら青褪めた顔で、しかしそれでも自分では結局どうすることもできなくて喘ぎ声を必死に抑えながら私をただ見つめてくる。
無力な志摩子さん。
それを犯す私。
でも犯される私。
ピナスをもった志摩子さん。

「大丈夫だよ」
なにが大丈夫なのかは知らない。ていうか多分何も大丈夫じゃない。大丈夫なことなんて何ひとつない。
「そ、そん……きゃぅ!」
何かを反論しかけた口を再び志摩子さんのピナスを含んだ私の口が間接的に遮る。
「ひう……ううんっ」
耳に心地いい声。

肌も頭も口のなかも全てが暑くて熱い。
冷房が効いているトイレなんて聞いたことがないしここも暑くて私の額には気温と激しい動作と昂奮で汗が滲んでいた。スカートを捲り上げて左手で触れている志摩子さんの太股も水分を含んでいる。
左手を動かしてみると、志摩子さんの太股の肌は汗を含んでなおさらさらとしていた。
ねっとりと汗ばんだ私の手とは全然違う。綺麗だ。
さらに左手を動かしつづけるとやがてそれが性感のどこかにあてはまったのか志摩子さんは時折背筋と脚をぴくりぴくりと揺らした。

「ひもちひい?」
ピナスを含みながら上目遣いに聞くとこくこくと頷き、無意識に抑えているのか、はっ、はっと静かな吐息だけが唇から発せられる。
志摩子さんの熱気に倦んで色をなくしかけた瞳を覗き込むとなんだかこちらまでが霞んでいくようだった。慌てた私は自分を現実に引き戻して保つために対象に問うことを始める。
「志摩子さん、すっかり感じちゃって。夢の中って感じだね」
「え……?」
「よだれ。垂れてるよ?」
「あ……」
「やっぱり気付いてなかったんだ」
恥ずかしそうに項垂れる志摩子さん。背筋をぞくぞくとした感触が駆け上がった。
「でもほんとおかしいよね。志摩子さんにこんなものがついてるなんて」
「……乃梨子……ひゃっ」
ふっと息をふきかけると志摩子さんはお腹のあたりを両手で抑えて体を少し折った。
ふわふわとした髪の毛がさわさわと私の耳や硬い髪に降りてくる。

私は唾液や汗や蜜やらでまみれた汚い手でその柔らかい髪をべたべたと触って梳いた。
弱いトイレの蛍光灯の光すらきらきらと反射する細くて柔らかい髪の輝き。
そこに加わる粘性をもった液体独特のてらてらとした光。

髪をさわりながら首の後ろに腕を回して下から突き上げるように口付ける。
なんのためも躊躇いもてらいもなくそれを受け容れる志摩子さん。

最初からこうだった。
私の口がその前に何を含んでいようが志摩子さんは戸惑わなかった。たとえ自分のものでも汚いと思わないのだろうか?不思議で仕方ないけれどなんだか怖くてそれについて聞いたことはない。
「んんっ……ふはっ、んっ、む……」
どちらのものともとれないくぐもった声がお互いの口内で響く。
私が引き寄せすぎたのか、バランスを崩した志摩子さんはこちらに倒れこんできた。支えようとした手はくにゃりと果敢なく折れ曲がりごく弱い力で私の肩を触れるように押しただけだった。
コツン、と音がして支えきれなくなった私の首と頭がトイレのドアに触れる。
唇は触れ合わせて舌はその中をこね回しながらそのまま、私はゆっくり屈伸運動をするようにしゃがんだ姿勢から徐々に足を伸ばし、洋式の便器に改めて志摩子さんを戻して座らせた。

少し視線を落とすとまくりあげられたスカートと白い太股と相変わらず屹立しているピナス。
本当にどうしてこの人にこんなものがついているのだろう。
わけのわからない妙な苛立ちのまましかしいい加減ふやけはじめた唇はまだ離さず、背もたれに人形のように力の抜けた体を体で押さえつける。衣擦れのしめやかな音。
頬ずりをするとお互いの汗でつるりと滑る。
それでも重なる胸から制服ごしに感じる志摩子さんの体温は夏の熱気のこもったトイレの気温よりどこかひんやりとしていて気持ちがよかった。

上位になった私から流れていった汗や唾液が触れ合った唇から垂れて志摩子さんの顎を伝っていく。
するすると滑り落ちていくそれは鎖骨を伝いやがて制服の胸元へ入って見えなくなる。
でもきっとそれは胸の間を伝ってお腹を伝って、やがてその場所に到達するのだろう。
私から出でた唾液や汗は清廉な志摩子さんの体を伝って浄化され、しかし最後にその器官によって
また元に戻る。

ふつふつと湧いてくる怒りにも似た焦り焦りとした苛立ちを私は感じた。
そう、多分私は怒っているし苛立っている。いったい何に。焦り焦りと。
まあ今のこの苛立ち程度のものは、初めてそれを目のあたりにしたときより全然程度の低いものなのだけれど。それでも体を重ねるたびに思うし、重ねていないときはもっと思う。もしかしたら、もしかしたらこんなことは全て夢なのではないかと思ってどうしても確認せずにはいられないし、でもいざ確認してしまったどうすることもできない。こんなことしかできない。
怒り。苛立ち。焦り。
「どうして……?ねえ志摩子さん、どうして?」
「……乃梨子?」
「……ごめん」
わけもわからず謝ってから、再びピナスを口に含んだ。

今度はさっきのように浅いところの往復はしない。喉につっかえるほどに深く飲み込む。覆い隠す。
そう、こんなものは私の口で隠してしまえばいいのだ。
「あっく、んっんぅ……ぅ!!」
鈴の音の声を依りどころにしながら必死でえづきそうになるのを耐える。
ぐぽっぐぽっぐぽっと空気が破裂するような音を喉で響かせながら考えた。
私にとってえづいて嘔吐すべきはきっとこの器官以外の志摩子さんなのだ。この器官は、ピナスは、私の隣にずっと在るような慣れ親しんだようなものではないか。耐えられないはずがないし、そもそも耐えるだなんてこと自体がおかしなこと。私が溶け合えるのはきっとここからだし、或いはここだけなのだから。

白く泡立った唾液にのって、志摩子さんの液の味を吸い上げるたびにわずかずつ感じた。もう何度めにもなる確かなその味は私の心をかきたてる。更に激しく頭を振った。沸き上がる淫らな音。
「のりこ、のりこ……!」
うわ言なのに、それでも懸命に私の名前を呼びながら志摩子さんは私の喉を突いてくる。
私はこれを私自身が私の中に在るように受け容れなければならない。
志摩子さんは爪先立ちになり、かくかくと膝を震わせながら折り重なるように私の上体を強く抱いている。
視界の端には女の子の部分から糸を引いている蜜が見えた。でも私はそこには触れない。
そこはきっと私が触れてはいけないところ。私はそこだけには触れられない。

ピナスが一瞬膨張するように私の口内で暴れる。
「うっ……あ……は……ひっく」
啜り泣くような絶頂の声を聞きながらどくどくと喉に当たる精液を感じ、それが漏れ出ないようにぴったりと唇をピナスにあわせてすぼめて飲み込んでいった。そうだこんなものは私が飲み込んでしまえばいいんだ。たくさんたくさん飲みこめば、いつか、尽きて。

「ひもちよかっは?」
ガクガクしてうまく喋れない顎でいつもの確認をすると志摩子さんはこれもまたいつものように泣き崩れて頷いたのだった。


「乃梨子……こんなことは、やっぱり……」
連れ立ってトイレを出ると怪しまれるから、と時間差をつけてトイレを出た後、追いついてきた志摩子さんは顔を伏せたままもう何度目にもなるセリフを口にする。

「……薔薇の館に行こう」
まだ汗ばんでいる手で、私はぎゅっと志摩子さんの手をとって歩き出した。

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