Ci-en

 

booth

聖×志

放課後の薔薇の館。
窓から差し込むオレンジ色の夕日が、後片付けに残った白薔薇姉妹を照らす。

「あー疲れたー。志摩子、休憩にしない?」
「そうですね・・・。じゃあわたし、お茶を淹れます」
「あ、ちょっと待って志摩子。今日はわたしが淹れるよ」
「そんな。お姉さまに悪いです。わたしが淹れますんで・・・」
「もー志摩子はガンコだなぁ。そういうところも好きだけど、今日は譲ってよ。ね?」

好きだとさらりと言われて、志摩子は思考が一瞬停止して頬が熱くなるのを感じた。
その止まってる隙をついて、聖はお茶を淹れに立つ。
(あ・・・。本当にお姉さまはわたしの扱いが上手いな・・・)
妙なことに感心しながら、好きというセリフと理解されていることの幸福に浸りながら
お茶が入るのをおとなしく待つ。

「ちょっと熱いから、気をつけてね」
少し経って、湯気をあげたティーカップを持ってきた聖が隣に腰かける。
隣にお姉さまが座っていること、カップを受け取る時に指先が触れたこと、
薔薇の館で二人きりなこと・・・。それらに頭の中をかき乱されすぎたのだろうか。
さっきの聖の忠告を忘れ、志摩子はかなり思い切りよく唇を熱いお茶につけてしまう。

「あつ・・・!」
口元を抑えると、聖が心配そうに顔を覗きこんでくる。
「舌は大丈夫?ちょっと見せて?」
「はひ・・・」

いわれるままに素直に舌を少し出す。見ようによってはかなり恥ずかしい表情だけど、
お姉さまは真剣に検分してくれている。
「大丈夫そうね。じゃあ次は唇を見るね?」
そう言うと聖は指を伸ばし、その腹で志摩子の唇をゆっくりとなぞる。
ゆっくり、ゆっくり。3回くらい上下の唇の上を、人差し指が往復する。背筋が疼く。
はしたないとは思うけれど、大好きな人に触られているんだからと無理矢理自分を納得させる。

「ん、こっちも大丈夫みたいだね」
唇の上から指が離れていく。少し名残惜しいような感覚。

そんな志摩子の一連の感情を敏感に読み取った聖は、少し唇の端を吊り上げながら言う。
「でも一応、消毒しとこうか?」
「・・・・・・?」
なんのことかよくわからない志摩子を尻目に聖はさっきまで唇の上を這っていた指を咥えて丹念に舐める。
そして口から話す時にちゅぽん、と音がしたかと錯覚するくらい唾液が絡められた人差し指を、もう一度志摩子の唇に伸ばす。

「唾液には殺菌効果があるからねー。消毒消毒♪」
からかうように笑いながら呆気にとられている志摩子の唇に指を押し当て、刷り込むように指を動かす。
丁寧に。余すところなく。何度も何度も唾液が塗りこまれていく。
生暖かい感覚が志摩子の唇を濡らしていく。

唇への唾液と指の陵辱がはじまって30秒くらいたって、志摩子の脳はようやく何が起きているかを
理解し始める。そして理解したとたんに、沸騰直前だった快感が解放されたように背筋を駆け上った。
わけのわからない感覚に耐えるために自然と拳と足のつま先をギュっと握ってしまう。

「あらあら、どうしたの、こぉんなに固くしちゃって」
いたずらっぽく微笑みながら握られた拳に左手を添えてくる聖。勿論右の指の唇辱はとまっていない。
「志摩子、これはただの消毒だよ?」
聖は耳元で囁くように言いながら、左手指でほぐすように志摩子の拳を開いていく。
せっかく握って力を入れていたのに、開かれてしまって力が入らなくなる。
(・・・・・・耐えられない・・・・・・)

「ふあ・・・・・・」
ついに声が漏れた。開いた唇から進入した指が口腔の中に入ってきて歯の上をなぞる。
「どうしたの?声なんかあげちゃって。わたしは消毒してるだけだよ?」
また耳元で囁かれて頭の中にわんわんと響く刺激。歯と歯茎の上を程よい強さでなぞる指の、痛いような
痒いような刺激。それらがこんどは脊髄を駆け下り、下腹に溜まっていく。

「ぁ・・・・・・くッ」
(どうしよう。また変な声が漏れちゃう・・・。お姉さまに、恥ずかしい声を聞かれちゃう・・・・・・)

——声を聞かれないためにはどうしたらいいのか——。
志摩子の熱に倦んだ思考は、その問いへの答えとして"口の中にある指をくわえる"という回答を出した。

「志摩子・・・・・・?」
「・・・せいさま、せいさま、んんッぷ・・・はむ」
急に必死に、何かにすがりつくようにと指をしゃぶり始めた志摩子の様子に、聖は一瞬怪訝そうな 表情をしたが、すぐ元の楽しむような笑顔に戻って左で志摩子の髪を愛おしそうになで上げた。
髪をなでられて気持ち良さそうに目を少し細めながら、赤い頬をした志摩子はぴちゃぴちゃと水音をたてつつ最愛の理解者の指に自分の唾液をからめ続ける・・・・・・。

人差し指を満足するまで舐め終わった志摩子は次は指の股に舌を這わせ、僅かな、しかし静まりかえった
室内にはあまりに響く音をたてながら丁寧にそこに唾液を舌で塗りこんだ。
それが終わると次は中指を口に含ませる。続いて薬指、小指・・・・・・。

「志摩子、もういいよ」
優しく言ってゆっくりと指を口から離す。ちゅぽ、と音がして唾液が糸を引く。
「ぁ・・・・・・」
名残惜しそうな、物欲しそうな表情で志摩子は視線をあげた。聖と目が合う。深い色の瞳に射すくめられる。
そのまま聖は視線をそらさず面白がるような表情も崩さず、志摩子を十数秒見つめる。
見つめながもら、左手で 髪をなでつけ耳を触り頬と首筋をゆっくりとさすることも忘れない。

聖はゆっくりと右手をあげ、唾液に濡れた指を蛍光灯の光に晒した。
てらてらと光る指先。
「あーあ、見てよ志摩子。すっかりふやけちゃったよ」
「志摩子、ちょっとおかしいんじゃない?これはいくらなんでもやりすぎだよ?わ、垂れてきた」
あくまで目は逸らさずに、多少間延びした口調で聖は言う。問い掛ける視線と言葉に志摩子は自分が
さっきまでやっていた行為を改めて認識させられる。羞恥の自覚に理性が苛まれ、頬が更に紅潮し目が潤んだ。

「でも・・・・・・嬉しいよ。志摩子が自分からしてくれるなんて」
そういうと聖は彼女の妹の唾液に濡れた右手をやわやわと自分の口元に持ってくると、舌をわざと大きく突き出して ゆっくりと舐め始めた。
その間も驚きに見開かれた志摩子の目から自分の目をそらすことはしない。
流し目で、 少し上から見下すように挑発的に見つめる。人差し指から中指、薬指・・・・・・志摩子のやったように一つ一つ丁寧に、 しかし志摩子とは違って大きな音を立て見せつけるように口に含ませていく。

「ん・・・・・・。志摩子の、おいしいよ」
「・・・・・・」
答えることができない。しかし行われている行為から目を逸らすこともできない。唇をふるふると震わせて
拳でスカートの端をギュッと握って体を固く硬直させて耐えるようにするしかなかった。
「あ、もったいない。こんなところにも♪」
聖は妹の様子を満足げにみながらひじ近くまでに垂れた唾液をもなめあげる。

「ふー、おいしかった」
そういって軽く目を瞑る。やっと視線から解放された志摩子だが、今度は殆ど自分の唾液が原因で濡れて
光っている聖の唇から目を離せなくなる。
(おねえさまの、おねえさまのくちびるが・・・・・・)
(わたしのをなめてた・・・・・・)
その事実を認識すればするほど、唇からは目が離せなくなり心臓が波打つスピードがあがってゆく。

「志摩子ぉー、どこ見てるのかなー?」
ハッとして顔をあげるとからかうように微笑んでいる聖とまた目が合った。理性が少しだけ戻ってくる。
「ち、ちがうんです・・・・・・」
「何も違わないよ」
「え?」

「志摩子のがあんまりおいしくってさ・・・・・・。だから今度は直接、味わいたいなぁ・・・・・・なんて」
冗談めかした問い。
「ぇ・・・・・・ぁ・・・・・・」
「・・・・・・ダメかな?」
今度は少し真剣に。

「・・・・・・ダメじゃ、ないです・・・・・・」
その答えを聞いて聖はそっと椅子から立ち上がり、そのままじゃやりにくいからと志摩子にも立つように即した。 両肩にそっと手をかけ、顔を近づけていく。
「ん・・・・・・」
どちらがあげたともわからない微かな声。最初は、唇と唇が触れ合うだけの軽いキス。それだけなのに、
聖の手には志摩子の体ががくがくと震える感触が伝わってきていた。

唇をそっと離して耳元で囁く。
「・・・・・・立ってられない?」
「あ・・・・・・ごめんなさ・・・い、ちから、はいら・・・なくて・・・・・・」
大丈夫だよ、と囁いて頬にキスしてから志摩子の背をテーブルに向けさせ、上半身をゆっくりあお向けに倒す。
志摩子はなされるがままに小さいお尻をすこしテーブルに乗せて、身を横たえる。
荒い息と赤い頬と潤んだ目と広がって一筋だけ口に入った髪と赤ちゃんのように緩く握られたこぶしが聖の嗜虐欲をそそった。

「・・・・・・ごめんね、志摩子。限界。もうあんまり、優しくできないかも」
覆い被さりながらそうつぶやき、志摩子の両手と自分の両手をかみ合わせた。お互いの手のしっとりと汗ばんだ感触を 感じながら、しばし見つめあう。志摩子がキュっと強く握ってきたのを合図のようにして、聖は妹の唇を再び塞ぐ。

「ん・・・ふっ・・・ぁ・・・ぅむ・・・・・・ぅんッ・・・・・・んんん!」
宣言通り、今度は容赦せずに、あるいは容赦できずに、積極的に唇をついばみ舌を入れ歯茎をなぞり口腔をこじあけ 蹂躙していく。志摩子は口内の快感を受け入れるような、同時に逃げるような仕草でよわく頭を左右に振ろうと するが、それを聖は許さず更に激しく巧妙に唇で唾液で舌で口腔を侵し冒し犯す。

志摩子が体をひくんとひきつらせる頻度が次第に増え、合わせた手にこめられる力も強くなってきている。
それによって志摩子が高まってきていることを感じた聖は、スパートとばかりに更に激しく舌を絡ませ、吸い、 唾液を大量に送り込んでわざと音をたてて飲み込ませるようにする。
そのうえ自らの膝を志摩子の股に素早く割り入れ、ギュっと敏感なところを押さえつけるようにした。

「・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
志摩子が大きく体を震わせた。唇が完全にふさがれていることと、余りに快感が強いことが相まって、声すらあげることもできなかった。
志摩子が達したのを感じとった聖は舌を動かすのをやめ、ゆっくりと口を離す。


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・おねえ、さまぁ・・・・・・」
とろんとした目で甘えるように言ってくる志摩子。
聖は応えずに少し憑かれたような目で妹を見つめ、ほどいた左手で頬をなで右手で胸の双丘の麓をゆっくりとなぞる。
「ぁ・・・・・・おねえさま・・・・・・?」
その行為によって引いていくはずの快感がやわやわと引き伸ばされるのに多少の恐怖を感じた志摩子だが、手つき のあまりの繊細さと優しさと、見下ろしてくる顔の微笑みに安心させられ、リラックスして身を任せ流されるままに 余韻を味わう・・・・・・。

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消えない快感。
広がる恍惚。
思考が溶けてしまいそうだ。
理性が蕩けてしまいそうだ。

「お姉さま・・・・・・」
私は少し上体を起こして、何かを求めるかのように手を延ばす。
殆ど無意識の行為。自分でも何をしたいのかよくわかっていない。
それなのにお姉さまはさらに優しく表情をくずし、当然のように
延ばした手をたぐり寄せ抱きしめてくれた。

そうか。私、抱き合いたかったんだ。
私のことを私よりわかってくれている私の愛しい人。

「そういえば、ちゃんと抱き締めあったことなんてなかったね・・・
 こんな可愛い志摩子、誰にも知られないように、覆い隠しておかないとね・・・」
お姉さまはそういってギュッときつく、更にきつく、抱擁してくれた。

お互いを確かめ合う時間が、ゆっくりと過ぎていく。

・・・・・・熱い。

体の密着した部分が熱い。
首筋にかかるお姉さまの息が熱い。
頬を流れ落ちる液体が熱い。
太股を・・・太股を流れ落ちる液体が・・・熱い。

頭の中がすぐ快感で埋め尽くされてしまうのに少し後ろめたさを感じ、
目の前にいる人に意識を集中させて抵抗を試みる。
しかし、下腹の奥底から溢れ出してくる快感と液体は、全く止まる気配がない。
それどころか、その勢いはますます強くなってきている。

「わ、志摩子、また溢れてきてる」
顔に血が上るのを感じた。
でも、もう弁解する余地も必要もない。
私は、お姉さまのことを考えて、こうなってしまうのだ。
もうこの快感が止まるとは思えない。
もうこの快感を止めようとも思えない。

「お姉さまが、悪いんです・・・・・・」
「志摩子だって・・・。わたしも、ほら・・・」
お姉さまは少しからだを離し、私の右手を自らの秘所に導く。
熱く湿った・・・いや、濡れた感覚が指先に伝わる。
「ね・・・・・・?」

「すごい・・・・・・」
「まあ、志摩子ほどじゃないけどね」
お姉さま多少意地悪く言うと、反論は受け付けないという意思表示なのか、素早く唇を塞いできた。

またさっきのように、強く吸われるのかと一瞬身構えてしまう。
でも、今度はやさしいくちづけだった。
まず唇をついばんで、次に舌でなめて、歯茎をなぞって・・・・・・。
一つ一つ、確かめるかのように段階を踏んで侵入してくるお姉さま。
私も、それを一つ一つ受け入れて、その一つ一つに応える。

時間は限りなくゆっくり流れている。
自然と体から力が抜けていく。
ときどき水音だけが小さな音を立てる。

何の躊躇いも気負いも緊張もなく、
私とお姉さまはもうずっと昔から何回もそうしてきたかのように、舌を絡め合いつづけた。
お互いの快感を、お互いの感覚に分け与え合う。

そうすることによって生じる、快感が共有され相乗されるような錯覚。

いや、錯覚ではないのかもしれない。
理性の臨界点なんて、とうに突破していると思っていたけれど。
あまりの快感と幸福に、自分がまだまだおかしくなっていくのを感じた。

なぜなら、私は・・・・・・私は、私のほうからお姉さまの秘所に自分のそこを押し付けて・・・・・・。
いいえ、押し付けるだけでなく・・・・・・腰を淫らに動かして、擦りつけ始めていたから・・・・・・。

「ああ、すごい・・・・・・」
やっと唇を離して、とろんとした目をしながらお姉さまはうわごとのように言う。
お姉さまの腰も、私の動きに応えるかのように淫らに動きはじめる。
二人の立てる音がどうしようもないほど室内に響き渡り・・・・・・。
意識がとびとびになって、涙で視界が霞んで、頭が真っ白になっていく・・・・・・。
もう耐え切れない。あらゆる理性は振り切れた。

ふるえているのはどちらのからだか。
わたしなのかおねえさまなのかわたしのなかなのかおねえさまのなかなのか。
わからなくなる。

「・・・・・・聖・・・さま・・・・・・聖さまぁ・・・・・・!」
何故か名前でお姉さまを呼んでしまったのを最後に、私の記憶はしばし途切れる

「いやあ・・・・・・。志摩子、ほんとすごかったよお」
「・・・・・・」
二人で館を出て、帰り道。

私は、達したあとにそのまま意識を失ってしまったそうだ。
目が醒めると、外はすっかり暗くなってしまっていた。
眠っている間に着衣や部屋はすっかり整えられて、後片付けされていて、
一瞬あれは夢のなかの出来事かと思ったけれど、
お姉さまが意地悪い笑みを浮かべながら手渡してきた濡れたショーツが全てを物語った。

「失神してさあ・・・・・・もうおもらししたみたいになっててさあ・・・・・・」
満足げに小鼻を膨らませながら語る姿に、少々辟易する。
「・・・・・・お姉さまだって・・・・・・」
ささやかな反撃。私の記憶にだって、お姉さまのあられもない姿は刻まれているのだ。

「あはは、いやまあ、そうなんだけどね」
でも、といってお姉さまは急に真面目な顔をして、私に改めて向き直る。
「でも・・・・・・ごめんね」
「・・・・・・お姉さま?」
いきなりの謝辞にわけがわからず、問い返す。


「キッカケがなんだか・・・悪ふざけの延長みたいになっちゃって
 もし途中で拒否されても、冗談で済むような、卑怯な手段をとったし、強引だったとも思う。
 私も結局、まだまだ臆病なんだね・・・・・・」

自嘲するような笑みを浮かべ目を伏せながらいうお姉さまの姿に、
私はいてもたってもいられなくなり、精一杯にほほえんで力一杯にお姉さまを抱き締め、

「また・・・・・・して、ください・・・・・・」

そう、耳もとで囁いた・・・・・・。
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