節分

志摩子さんと乃梨子ちゃんの場合
「志摩子さん家では豆まきしたり太巻き食べたりする?」
「そうね……。小さい頃は豆まきもしていたけど、最近は太巻きを少し食べるくらいかしら。大きいから一本は食べきれなくって」
「あ、じゃあ今年は家にきて一緒に太巻き食べない?菫子さんと三人で一本分ければ、普通に食べきれると思うし。菫子さんそういう行事は欠かさないタイプだからきっと買ってくると思うんだ」
「本当?嬉しいけれど、お邪魔していいのかしら」
「いいよいいよ全然いいよ!志摩子さんなら大歓迎」
「うふふ。乃梨子ったら……。それなら、是非お邪魔させて貰うわ」
「わかった。菫子さんにも言っておくねー」

(ムフフ。あの清楚で可憐な志摩子さんが小さい口をはしたなくも一生懸命に大きく開けてたくましい太巻きという剛直をピンク色の唇にいっぱいに咥えながら上目遣いで恥ずかしそうにチラチラと私のほうを見たりしながらもごもごと苦しそうに咀嚼して飲み込みきれなかった唾液が垂れてそれに不快げにキュッとひそめられた眉根が戸惑いと劣情を表し……おっと鼻血が。節分最高!志摩子さん好き!)


紅薔薇姉妹の場合
「清子おばさま、ごきげんよう。お招き頂いてありがとうございます」
「ご、ごきげんよう!」
「あら水野さんに福沢さん。いらしてくれたのね。祥子も喜ぶわ。奥の部屋にご案内するわね」

「ごきげんよう、お姉さま、祐巳。今日は存分に豆を投げていってね」
「……そうは言われましてもお姉さま、鬼は誰がするんですか?」
「大丈夫。祐巳が心配するまでもなく鬼は手配してあってよ。そこの襖を開けて御覧なさい」
「はあ……」
(スルスルと襖をあける祐巳。その先の和室には、柱にしばりつけられ額に鬼と書かれた柏木がいる)
「どどどどどど」
「……面白い趣向ね」
「さっちゃん、何かの冗談だよね、これ?」
「おほほほほ!祐巳、お姉さま、準備はよろしくって?」


加東さんと聖さまの場合
「いやーメリー節分」
「何よそれ」
「まあまあ。細かいことは気にせず豆でも食べましょう。年の数だっけ?」
「数え年だから二つくらい多くなるけどね」
「なるほどー。じゃあこれでいいのかな」
「?一個少なくない?」
「うん。でもこれで合ってる。だって最後の一個は加東ちゃんのお豆を……」
「出てって」


鳥居家の場合
「え、えりちゃん!さあ!豆を!豆を投げてくれ!」
「存分に!ほら、お兄ちゃん達とお父さんは鬼だぞお、怖い怖い鬼だぞお」
「そうそう、ははははやく投げてくれないとえりちゃんを食べちゃうんだぞお!」
「…………。」(江利子、豆をお愛想程度に投げつける)
「おおおおっ!!もっと!もっとだ!もっと投げておくれ、えりちゃあああーん!」
「…………(家出したい)」


令さまと由乃さんの場合
「あ、令ちゃん、太巻き食べてる!」
「……(由乃、いくらお隣でも晩御飯中に急に入ってこないでよ)」
「なんで黙ってるの?」
「……(食べてる間は喋っちゃいけないんだよ)」
「そっか、食べてる間は喋ったらいけないんだったね」
「……(そうそう)」
「令ちゃんこんなの信じてるんだー。良いことなんてそう簡単に起こらないよ」
「……(ほっといてよ)」
「こんなにおっきいの食べきれるの?」
「……(ちょっと苦しいかな)」
「食べきれないよねー。じゃあ、私が反対側から食べてあげる」
「……!(え、ちょっと待って!)」
「いただきまーす(パクッ)」
「……(もぐもぐ)」
「……(もぐもぐ)」
「……(もぐもぐ。なんなんだこの光景は)」
「……(もぐもぐ。食べるほどに令ちゃんの顔が近づいてくるなぁ)」
「……(もぐもぐ。もうすぐ終わりかな)」
「……(もぐもぐ。令ちゃんの顔……すごい近い。あと一口分)」
「……(もぐもぐ、ごっくん)」
「……(ごっくん)」
ちゅ。
「あ……」
「えへへ」
「よ、よしのぉ」
「いいことあったね、太巻き」
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